本日は、機能性ディスペプシアの中で、心窩部痛症候群について呟いてみたいと思います。
機能性ディスペプシアとは、機能性とディス(不良)とペプシア(消化)を組み合わせてできた言葉で、以前は機能性胃腸症といわれていた病気です。
機能性ディスペプシアは心窩部痛症候群と食後愁訴症候群に分類されます。
RomeIVという機能性ディスペプシアの診断基準によりますと、
機能性ディスペプシアとは、『症状を説明できそうな器質的、全身的、代謝性疾患がないにもかかわらず、食後の膨満感、早期満腹感、心窩部痛、心窩部灼熱感の4つの症状のうち1つ以上を有するもので、6か月以上前にこれらの症状を経験し、しかもこの3か月間この症状が続いているもの』と定義されております。
分かりにくいので、ざっくり申し上げますと、血液検査・腹部超音波検査・腹部CT検査・内視鏡検査などを施行したものの、胃潰瘍や胃がんなどの異常は見つからなかったものの、食後に胃もたれがあったり、食後早期に満腹感があったり、みぞおちが痛くなったり、みぞおちに焼けつくような痛みがあったりすることが6か月以上前からあり、最近3か月間症状が続いている場合に、機能性ディスペプシアと診断されます。
そのうち、みぞおちが痛くなったり、みぞおちに焼けつくような痛みがある場合を、心窩部痛症候群と呼んでおります。
心窩部痛症候群患者さんの治療では、胃酸分泌を抑制することが重要であると考えられておりますが、胃酸は胃の運動異常と密接に関与していることが分かっており、機能性ディスペプシア患者さんで心窩部痛症候群と診断された場合に、胃酸を抑える治療だけでよいという単純なものではないことは、消化器内科の中では周知の事実であります。
川崎医科大学は、胃酸が十二指腸へ流入することで胃の運動異常が起こること、機能性ディスペプシア患者さんでは、機能性ディスペプシアではない健康な人より、十二指腸への酸流入による胃の運動異常が起こりやすいことを報告しております(1-3)。
治療には、酸分泌抑制薬、運動機能改善薬、漢方薬、抗不安薬、抗うつ薬などがあります。
1.Ishii M, Real-time evaluation of dyspeptic symptoms and gastric motility induced by duodenal acidification using noninvasive transnasal endoscopy, Journal of Gastroenterology, 2008
2.Ishii M, Evaluation of duodenal hypersensitivity induced by duodenal acidification using transnasal endoscopy, Journal of Gastroenterology and Hepatology, 2010
3.Ishii M, Duodenal hypersensitivity to acid in patients with functional dyspepsia-pathogenesis and evaluation, J Smooth Muscle Res. 2010