院長のひとり言

『自己免疫性胃炎』について

今日は、『自己免疫性胃炎』について呟いてみたいと思います。

自己免疫性胃炎は、胃の壁細胞にあるH/K-ATPase(プロトンポンプ)に対する自己免疫反応により、壁細胞が破壊されることによりひきおこされる慢性胃炎のことを指します。

プロトンポンプは、胃酸分泌を担っております。壁細胞の破壊により、胃酸及び内因子の分泌が低下するとされております。

内因子はビタミンB12と結合し、回腸終末部より腸上皮細胞に吸収されます。すなわち内因子が欠乏すると、ビタミンB12欠乏が起こり、ビタミンB12欠乏性貧血を引き起こす可能性が高くなります。

食べ物の中の鉄は、三価の鉄イオンとして存在しておりますが、胃の中で胃酸により二価の鉄イオンになり、十二指腸及び、空腸上部の粘膜で吸収されます。そのため、胃酸分泌が低下すると鉄の体内への吸収がへり、鉄欠乏性貧血を起こしやすくなります。

自己免疫性胃炎は、胃がんや胃カルチノイドを併発する頻度が高いこと、著しい低酸の状態による鉄の吸収低下やビタミンB12の低下により貧血を呈することなどが、自己免疫性胃炎を診断する意義であるといわれております。

胃の内視鏡検査で、胃体部主体の萎縮性変化が診断のきっかけになり、血液検査や内視鏡の組織生検により自己免疫性胃炎と診断されます。

無症状であることが多いこと、また日本ではヘリコバクター・ピロリ菌に伴う萎縮性胃炎が多く、自己免疫性胃炎と診断されていない患者さんが多いということをおっしゃられる先生もいらっしゃいます。

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